タイムラインに、誰かが強く怒っている投稿が流れてきたことはありませんか。
読んでみると、たしかにこれはひどいなと感じる。返信欄にも同じような意見が並んでいる。それで「本当にひどいですね」と一言添えて拡散した。よくある光景ですし、悪気もまったくないと思います。
ただ、この「乗っかる」という行為には、思っている以上のリスクがあります。ちょっと立ち止まって、一緒に考えてみましょう。
「乗っかっただけ」でも、自分の発言になります
たとえば、あるお店の接客がひどかった、という怒りの投稿があったとします。
このとき起きているのは、自分がそのお店を批判する発信をしたということです。「元の投稿を紹介しただけ」という感覚かもしれませんが、受け取る側からはそう見えません。
しかも、あなたが見ているのは片方の話だけです。お店側にどんな事情があったのか、そこには書かれていません。もし投稿の内容が事実と違っていた場合、拡散した側も、事実ではない情報を広げた一人になってしまいます。
「いいね」や拡散だけでも、責任を問われた例があります
「自分は書き込んでいないから大丈夫」と思うかもしれません。ここは知っておいてほしいところです。
過去には、SNS上で特定の人を中傷する複数の投稿に「いいね」を押した行為について、名誉感情を傷つけたとして損害賠償が命じられた裁判例があります(東京高裁 令和4年10月20日判決/令和6年2月に最高裁が上告を退けて確定)。認められた賠償額は55万円でした。


ただし、この判決は「いいねを押したら違法」と言っているわけではありません。中傷する投稿に25回も「いいね」を押していたこと、それ以前からその人への批判を繰り返していたこと、フォロワーが約11万人いたこと、国会議員という影響力のある立場だったことなど、具体的な事情が積み重なった結果として判断されたものです。一般の利用者が一度「いいね」を押したことが、そのまま違法になるケースはまれだと考えられています。
とはいえ、リポスト(リツイート)については、名誉を傷つける投稿を拡散したとして賠償が命じられた例が複数出ています。ボタンを押すだけの行為も、法的にはまったくの無関係ではない、ということですね。
誹謗中傷とは、相手の名誉や人格を傷つける書き込みのことです。自分で書いていなくても、それを広げる側に回れば、無関係ではいられなくなります。
なぜ、怒りの投稿にはつい乗ってしまうのか
強い感情がこもった投稿は、人の目を引きます。だから拡散されやすく、タイムラインにもよく流れてきます。
さらに、返信欄に同じ意見が並んでいると、「みんなそう思っているんだから、正しいんだろう」と感じやすくなります。ここに、正義感が少し加わる。自分は間違ったことをしていないという気持ちがあるぶん、ブレーキがかかりにくいんですね。
でも実際には、見えているのは出来事のごく一部で、しかも片側からの説明だけです。
流れてきた怒りに乗らないための、3つの習慣
- 「これは自分の話か?」と一度確認する
当事者でないなら、見守る側でいて大丈夫です。何も言わないことは、冷たいことではありません - 反対側の話がないか、頭の片隅に置く
片方の言い分だけで判断していないか。判断がつかないなら、そのまま流すのがいちばん安全です - 誰かを応援したいときは、攻撃しない形で書く
「大変でしたね」と当事者をねぎらうことはできます。誰かを叩かずに書けるかどうかが目安になります
あわせて、「いいね」をあとで読むためのしおり代わりに使わないのもおすすめです。ブックマーク機能を使えば、他の人に見える形にならずに保存できます。
よくある疑問
さいごに
SNSで怒りや不満を見かけたとき、何も反応しないのは、少し薄情な気がするかもしれません。
でも、当事者でないことに乗らないというのは、相手を守ることでもあり、自分を守ることでもあります。指が止まったときは、「これは自分の話かな?」と一度だけ確認してみてください。たったこれだけで、避けられるトラブルはかなり多いですよ。



