「社員にSNSの注意点を伝えておかないとまずいな」と感じて、いざ動こうとしたとき。多くの経営者や総務担当の方が、最初にこう考えます。「これ、わざわざ外部に頼まなくても、社内でできるんじゃないか」と。
ネット上には情報がたくさんありますし、SNSに詳しい若手社員もいる。予算をかけずに済むなら、そのほうがいいですよね。その感覚は、決して間違っていません。
ただ、社内でやったほうがうまくいくケースと、外部に頼んだほうが結果的に早くて確実なケースは、はっきり分かれます。この記事では、その分かれ目をできるだけ正直に整理してみます。「絶対に外部に頼むべき」という話ではありません。自社にとってどちらが現実的か、判断する材料としてお読みください。
社内実施の強みは「自社の事情を知っていること」
まず、社内研修には外部にはない強みがあります。それは、自社の業務内容や社内の空気を知っているという点です。
「うちの現場だと、この写真は撮っちゃいけない」「この情報は取引先に迷惑がかかる」といった話は、実際にその仕事をしている人でないと出てきません。一般論としてのSNSリテラシーより、こうした具体的な話のほうが社員の記憶に残ります。
費用がかからないことも、当然ながら大きな利点です。そして、朝礼や月例ミーティングの一部を使うなど、短い時間で繰り返し伝えられるのも社内ならではですね。
社内実施が向いているケース
- すでに社内にSNSのルールがあり、その周知・徹底が目的である
- 過去に外部研修を受けたことがあり、そのフォローアップとして行う
- 担当できる人がいて、準備の時間を業務として確保できる
- 10名程度までの規模で、日常的に声をかけ合える距離感がある
社内実施でつまずきやすい3つの壁
一方で、「社内でやろう」と決めたものの、結局進まないまま時間が過ぎてしまう。これは中小企業でよく起こることです。理由はだいたい、次の3つに集約されます。
1. 準備に想像以上の時間がかかる
1時間話すための資料をつくるには、調べ物を含めて何倍もの時間がかかります。ネットで情報を集めるだけなら簡単ですが、「どれが自社に関係あるか」「どこまで話せば伝わるか」を判断する部分に手間がかかるんですね。
中小企業では、担当になる人がたいてい他の業務と兼任です。日々の仕事に追われるうちに、資料づくりが後回しになる。これは能力の問題ではなく、単純に時間の問題です。
2. 「身内の話」として聞き流されやすい
これは少し切ない話ですが、同じ内容でも、誰が話すかで届き方が変わります。
身近な上司や先輩から「SNSには気をつけてね」と言われると、注意されたと受け取られたり、「またその話か」と流されたりしやすい。特に、若手のほうがSNSに詳しいという状況だと、「よく知らない人が言っている」と思われてしまうこともあります。
外部の人が話すと、内容が同じでも「一般的に、そういうものなんだ」という受け取り方に変わります。社内の人間関係を持ち込まずに済む、というのは意外と大きな違いです。
3. 情報が古くなったことに気づけない
SNSは、サービスの仕様も、トラブルの起き方も変わり続けています。数年前の常識が今は通用しない、ということが珍しくありません。
一度つくった資料を使い回していると、気づかないうちに内容がずれていきます。困るのは、間違っていることに社内の誰も気づけない点です。
社内実施と外部委託、どちらが良いか判断する5つのチェック
では、自社はどちらが向いているのか。次の5つを確認してみてください。
- 準備に使える時間が、担当者に本当にあるか:「空いた時間でやっておいて」は、多くの場合そのまま止まります
- 話す人が、社員から「詳しい人」として見られているか:説得力は肩書きではなく、認識で決まります
- すでにトラブルが起きた、または起きかけたか:このタイミングでの社内研修は、犯人探しのように受け取られやすくなります
- 就業規則やガイドラインが整っているか:ルールがないまま注意だけしても、社員は判断に迷います
- 「やった」という記録が必要か:取引先や親会社に体制を説明する必要がある場合、外部研修は記録として残しやすい形です
1と2に不安があるなら、社内だけで進めるのは正直むずかしいかもしれません。3から5に当てはまる場合は、外部を使ったほうが目的を達しやすくなります。
「社内実施か外部委託か」ではなく、組み合わせが現実的
ここまで読んで、「うちはどっちつかずだな」と感じた方もいると思います。実際のところ、多くの中小企業にとって現実的なのは、両方を組み合わせる形です。
たとえば、最初の土台づくりは外部の研修で一気に行い、その後の定着は社内で続けるという進め方があります。基本を外部が整理してくれれば、社内では「あのとき言われたやつ、うちの現場だとこういうこと」と補うだけで済みます。ゼロから資料をつくるより、はるかに負担が軽くなりますよね。
反対に、社内である程度伝えてきた実感があるなら、年に一度だけ外部の視点を入れて、抜けていた部分を補うという使い方もできます。
費用をかけずに社内実施から始めるなら
予算の都合で、まずは社内で始めたいという場合もあると思います。その場合は、あれもこれもと詰め込まず、次の3点に絞るところから始めてみてください。
- 会社に関する情報は、公開されているものだけ書く:取引先名、来店したお客様、社内の様子など、判断に迷うものは投稿しない
- 投稿は誰でも見られる場所にあると考える:非公開設定でも、スクリーンショットで外に出ていく可能性があります
- 迷ったら投稿しない、または誰かに相談する:「これって大丈夫かな」と一瞬でも思ったら、そこで止まるのが一番確実です
この3つだけでも、伝えて共有されていれば、防げるトラブルはかなりあります。
よくある質問
まとめ
社内研修か外部研修かは、どちらが優れているという話ではありません。判断の軸は、「準備の時間を確保できるか」と「社員に届く形で伝えられるか」の2点です。
この2つに自信が持てるなら、社内で進めるのが一番早い。どちらかに不安があるなら、外部を使ったほうが結果的に手間も時間も少なく済みます。
大切なのは、完璧な形を目指して動けなくなるより、まず一歩進めることです。今日の朝礼で3分話すことからでも、始められますよ。
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