現代社会でSNSは私たちの生活に欠かせないツールとなっています。友人とのコミュニケーション、情報収集、エンターテインメントなど、様々な場面で活用されています。しかし、その便利さの裏に隠された危険性について、どれだけの人が正しく理解しているでしょうか。
令和7年の警察白書では「SNSを取り巻く犯罪と警察の取組」が特集され、現在のSNS犯罪の深刻な実態が明らかになりました。この記事では、警察白書の内容をもとに、SNSに潜む危険性と私たちができる対策について、分かりやすく解説します。
SNS犯罪の現実 – 数字が語る深刻な状況
被害額1,200億円超!SNS型投資・ロマンス詐欺の急増
令和6年(2024年)のSNS型投資・ロマンス詐欺の被害状況は、私たちの想像をはるかに上回る深刻さです。
- 認知件数:10,237件(前年比大幅増)
- 被害額:1,272億円(前年比大幅増)
- 1件あたりの平均被害額:1,200万円超
これらの数字は、SNSを通じた詐欺がもはや個人の問題ではなく、社会全体を脅かす深刻な問題であることを物語っています。
ターゲットとなる年齢層
被害者の年齢分布を見ると、40歳代から60歳代の被害が特に多く、働き盛りで一定の資産を持つ層が狙われていることが分かります。しかし、若い世代も決して安全ではありません。
SNS犯罪の巧妙な手口を知る
投資詐欺の典型的な流れ
- SNS上で接触:著名人や投資家を騙った偽広告を掲載
- 信頼関係の構築:時間をかけて相手を信用させる
- 他のアプリへ誘導:LINEなどより親密なコミュニケーションツールへ移行
- 投資への勧誘:「必ず儲かる」などの甘い言葉で誘導
- 金銭の詐取:銀行振込や暗号資産での送金を要求
ロマンス詐欺の手口
ロマンス詐欺では、犯人がマッチングアプリやSNSで異性になりすまし、恋愛感情を利用して金銭を騙し取ります。特に外国人や海外在住者を名乗るケースが多く、直接会うことができない理由を用意しています。
新たな脅威「匿名・流動型犯罪グループ」
現代の犯罪組織の特徴
警察白書では、新しいタイプの犯罪組織として「匿名・流動型犯罪グループ」について詳しく説明されています。この組織の特徴は以下の通りです。
- 匿名性:組織の中核部分が匿名化されている
- 流動性:SNSを通じてメンバー同士が緩やかに結びつく
- 使い捨て:末端の実行者を「使い捨て」にする構造
「闇バイト」の実態
SNS上では「楽で、簡単、高収入」を謳う怪しいアルバイト募集が横行しています。これらの特徴的なキーワードには以下があります。
- 「高額」「即日即金」「ホワイト案件」
- 具体的な仕事内容を明示しない
- 運転免許証や顔写真の提出を求める
応募者は最初に個人情報を握られ、犯罪への参加を断ろうとすると脅迫されるという構造になっています。また、約束された報酬が支払われないケースも多く確認されています。
児童を狙う卑劣な犯罪
SNSを悪用した児童への性的搾取
令和6年中、SNSに起因する児童の性的被害は1,486人に上りました。特に深刻なのは、小学生の被害が近年増加傾向にあることです。平成27年の35人から令和6年の136人へと、約4倍に増加しています。
被害の手口
- コスプレ撮影などを口実にした接触
- オンラインゲームを通じた知り合い
- SNSでの不適切な写真送信の要求
薬物犯罪とSNSの関係
SNS経由での薬物入手が増加
大麻の入手先を知った方法として、SNSを含む「インターネット経由」が全体の4割弱を占めています。特に若年層ほどその割合が高く、20歳未満では4割を超えています。
薬物犯罪者は、SNS上で暗号のような表現を使って薬物を宣伝し、購入希望者を匿名性の高い通信手段に誘導して取引を行っています。
偽情報・誤情報の拡散問題
災害時の偽情報が命に関わる
SNS上の偽情報・誤情報は、特に災害時において深刻な問題となります。令和6年能登半島地震の際には、救助が必要という虚偽の情報を投稿し、警察の業務を妨害した事例も発生しました。
外国による情報工作
国際的にも、外国による偽情報の拡散が問題となっています。中国企業による偽サイト運営、ロシアによる米国選挙への干渉など、偽情報は国家レベルの脅威となっています。
SNSで困った時の相談先
警察への相談
怪しいと思ったら迷わず警察に相談しましょう。警察では以下の取り組みを行っています:
- 24時間の相談受付
- 被害者・相談者の保護
- SNS事業者と連携した迅速な対応
その他の相談窓口
- インターネット・ホットラインセンター:違法・有害情報の通報
- 各都道府県の消費生活センター:詐欺被害の相談
- 法テラス:法的トラブルの相談
おわりに
SNSは私たちの生活を豊かにする素晴らしいツールですが、同時に新しいタイプの犯罪を生み出す温床ともなっています。警察白書が示すデータは、この問題がもはや他人事ではないことを明確に示しています。
重要なのは、SNSの危険性を正しく理解し、適切な対策を講じることです。技術の進歩に伴い犯罪手口も巧妙化していますが、基本的な防御策を実践することで多くの被害は防げます。
私たち一人ひとりが情報リテラシーを向上させ、家族や友人と情報を共有し、怪しいと感じたら躊躇せずに専門機関に相談する。こうした地道な取り組みが、安全なデジタル社会の実現につながります。
SNSを安全に活用し、その恩恵を十分に享受するために、今日から意識と行動を変えていきましょう。あなた自身と大切な人を守るために、正しい知識と警戒心を持ち続けることが何より重要です。
参考資料:警察庁「令和7年警察白書 特集 SNSを取り巻く犯罪と警察の取組」
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この記事の内容は令和7年警察白書をもとに作成しており、最新の犯罪動向と対策について解説しています。SNSを利用する際は、常に最新の情報を確認し、適切な対策を講じるよう心がけてください。